映画【ウトヤ島、7月22日】感想 全ての観客は事件現場に放り込まれる
こんにちは😃ごんピクシーです(^_^)。
今日紹介する映画は、2011年7月22日にノルウェーのウトヤ島で実際に起こった無差別銃乱射事件を、生存者の証言を基に映画化した作品【ウトヤ島、7月22日】です。
【ウトヤ島、7月22日】
2019年3月8日公開
臨場感 95
イライラ度 90
オススメ度 70
総合 68点
2011年の7月22日、首都オスロの政府庁舎で爆発事件が起こる。まだ何の爆発なのかも判明していない中、オスロから40キロ離れたウトヤ島では労働党青年部のサマーキャンプが行われていた。
キャンプに参加中のカヤ(アンドレア・バーンツェン)は、一緒に参加した妹のエミリエと喧嘩し、仲間達と合流し話し込んでいた。すると突然銃声が聞こえ、それと同時に逃げ回る人たちが。何が起こったかわからないまま仲間達と逃げ始めるカヤ。しかし、妹の事が心配な為、1人妹がいたテントを目指すのだった。
コメディー、アクション、ホラーなど、映画にはジャンルがたくさんありますが、この映画は完全に体験型映画ですね。
例えば映画「ダンケルク」は、開始5分で自分が戦場にいるような気になる戦場体験型映画になります。
【ダンケルク】レビュー参照
今回の「ウトヤ島、7月22日」は、開始約10分で無差別銃乱射事件現場に放り込まれるわけです。
しかも撮影手法は、主人公カヤの登場から72分間をワンカットで描いています。
上映開始後、私はすぐに不安になりました。
それはカメラの手ぶれがひどかったからです。
これはもしかしたらカメラ酔いになるかも!と心配になったのです。(今までカメラ酔いした事はないが。)
でも手ぶれが気になったのは、最初の妹と会う為にテントに歩いている時だけでした。
手ぶれが収まったわけではありません。
そんな事気にならないくらいの状況に追い込まれるのです❗️
突然鳴り響く銃声。
悲鳴とともに走って逃げてくる人々。
「えっ!嘘!何!?」
ほとんどの人が状況を掴めていません。
もちろんカヤも全くわかっていません。
「銃を乱射してる奴がいる。建物に逃げろ!」
その声でみんな一斉に逃げ始め、食堂になっている小屋へ逃げ込みます。
実は私は観ている間、ずっとイライラしていました。
それはこの映画の特性でもあるんですけど、カメラはずっと主人公のカヤと一緒に動くんですよ。
だからカヤがじっとしてるとカメラも動かず、画面も固定されたままになるんです。
いやいやカヤさん❗️もっと周りを見てよ❗️状況を確認してよ❗️
突然のことでパニックになるのは分かります。
ただ観客の多くはもうあなたと行動を共にしているんですよ!
あなたが周りを見てくれないとこっちはどうなってるか全くわからないんですよ❗️
しかも、逃げ込んだ建物は鍵もかからないし、そんな入り口近くにいてもし犯人が入って来たらすぐ殺されますよ。もっと奥に行かないと!
と思っていたら、今度は誰かが言い出します。
「ここは危ない!外に出よう!」
ここでも一言❗️
出るのはいいよ!でも犯人がすぐ近くにいるかも知れないじゃん!
犯人がいないことを確認してから出ましょうよ❗️
結果的に犯人が近くにいなかった為、森に逃げ込むカヤと仲間たち。
なるべく遠くに行きましょう。
え❗️え❗️なんで⁉️
なんでそんな近くの木の窪みにみんなで隠れるの⁉️
私は初めて映画館でスクリーンに向かって文句を声に出して言いそうになりました。(なんとか耐えたが。)
何やってんだよ❗️
この後、なぜか急にスイッチが入り、妹を探しに単独行動をするカヤ。
撃たれた人を看取ったり、泳いだり、崖に隠れたり。
はたして彼女の運命は……。
ここまでかなり文句を言ってきましたが、観終わってしばらく経つと気付いた事がありました。
それは、
監督はわざとイライラする様な演出にした
って事です。(多分)
何が起きてるのか、なぜ襲われてるのか、犯人は何人なのか、どこに逃げればいいのか、全く情報が入って来ません。
観ていてイライラしている観客(私)は所詮安全な映画館にいます。
よりリアリティーを出す為に、
周囲を見渡して状況を確認できないストレスを、観客にも少しでも体験させる事が目的なのでは
と思うのです。
そう考えると私は監督の術中に完全にハマってしまったというわけです。
エリック・ポッペ監督。おそるべし。
ポッペ監督の「ヒトラーに屈しなかった国王」もオススメです。
【ヒトラーに屈しなかった国王】レビュー参照